2015年1月24日土曜日

繰り返される食の問題とメディアと企業と

2014年から2015年にかけては、食品への異物混入を一部マスメディアが安易に取り上げたために、大騒ぎになりました。それに関して、以下徒然と考えてみます。

そもそも、このトピックがメディアで大盛り上がりになったのは、以前に一度盛り上がった産地偽装のトピックが収まってきたために、メディアとしてはそろそろ取り上げれば流行るかなあ、といったところでしょう。その前には、賞味期限の偽装の問題もありましたし、古くはO-157なんかもありました。

食品に関わる問題というのは、身近な問題だけに大きく注目を集めることができるのでメディアにとっては大変都合のよい題材になります。実際にこれらの報道された問題が、その時期にだけ発生していたものではないのは明らかなのですが、メディアとしては注目を集めて換金するのが事業の基本ですから、前の問題が適度に風化したところでめぼしいものを取り上げる、という行動を繰り返すことになっています。

では、報道される企業の側から、みるとどうなるのでしょう。おそらく現場では、メディアにクローズアップされると大慌てで対応しているのでしょう。そのため、大衆の反応を考えない対応をして火に油を注ぐような会見を行ったりするわけです。そうすると、メディアによるこういった問題を報道する姿勢は企業にとっては予想できないリスクでしかないのでしょうか。

そうではないはずです。本来、事業活動を行う上で、起きたことに対処するというのは戦略の無い稚拙なやり方でしょう。企業として、コアの部分でビジョンがあれば、いかなる事態に遭遇したとしても、(その企業にとっての価値を増大させるという意味で)適切な対応ができるはずです。また、事業は継続することが最低条件ですから、潜在的な問題への対処を常に用意することは、日常の仕事に含まれてしかるべきなのです。

そうしてみると、そもそも大騒ぎになってしまっている企業の問題点というのは、表面的には衛生管理ができていない、広報にまともな人材がいない、役員が何もわかっていない、という風に見えるものの、本質的には企業理念が無いから、というところに還元されてしまいます。例えば、マクドナルドの企業理念をみると:
「クイックサービスレストランとしての最高の店舗体験の提供により、お客様にとって「お気に入りの食事の場とスタイルであり続けること」をミッションとしま す。そしてQSC&V(Quality品質,Serviceサービス,Cleanliness清潔さ,Value価値)をレストラン・ビジネスの 理念としそのミッションを達成します。」

ここまで具体的に書いてあれば、ただそれを実行すればいいだけじゃないか、となりますが、とんちんかんなメディア対応。お客様対応を見ていると、理念を理解している社員がいないようです。例えば、”店舗体験”って何?”お客様”って誰?”食事の場とスタイル”って何が同じで何が違う?”QSC&V”は前年度と今年度でどのように改善した?という質問に社員が答えられず、これらは言葉としてそこにあるけれど、無視されており、会社の中には理念が存在しないのでしょう。そのため、問題は継続的に発生するし、対応もちぐはぐになってしまうのです。

一連の報道された事例というのは、対象が大企業である、ということと、ツイッターを始めとしたウェブサービスが騒動を拡大するのに一躍買っているというところが共通しています。この二つの方向性、すなわち、企業が大きくなり一つの企業がより多くのお客様に接するようになる、ということと、ウェブは極端だがまれな事象を多くの人に知られやすくする、ということが合わさると、企業にとってはこれまでにない内部統制が必要な環境になるわけです。

一つの回答は、使い古された概念ですが、シックスシグマやカイゼン運動になるのでしょう。企業のプロセスを極限まで持続的に改善していくことで、不良の確率を限りなく下げること、そして下げた状態を維持することが求められる時代です。しかしながら、この方法というのは改善のためのコストが次第に上昇していくため、実際の現場では既に限界に達しているのではないでしょうか。例えば、異物の混入率を1桁下げるには、商品価格を2倍にしないと割に合わない、というのが現場の実感でしょう。

そうすると、別な回答として、コストに見合った範囲で内部統制はしつつも、コミュニケーション戦略で対応するのか、それとも顧客セグメントごとに事業やブランドを分割し、顧客をセグメントごとに囲い込んでしまうことで 、リスクを分散するといった対応が考えられます。コミュニケーション戦略の例としては、事前に事故対応を策定しておく、ということと、広報戦略上のコアとなる価値観を明確にし、それをすべての担当者に徹底して理解させておく、というところでしょう。何を質問されても理念に沿って答えられるレベルにしておけば、何が起きても問題ないわけです。というよりも、たまには社会から批判されるのは、事業戦略として織り込み済みであって、メディアバッシング引当金が正確に計上出来るはずなのです。

一方で、リスク分散の例としては、多数のブランドを抱えた携帯にしておけば、一つのブランドの商品で品質不良が騒がれたところで、他のブランドには何の影響も与えないでしょう。例え、同じ工場で生産していたとしても。メディアや大衆はそこまで細かく考えませんし、調べることもないからです。 逆に考えると、1つのブランドで会社全体の事業を運営している場合には、クレームへの対応は非常に慎重に行うべきと言えるかもしれません。なぜなら、ブランドを毀損すると会社全体の事業に負の影響を生じてしまうためです。

こうしてみると、食の問題等でなにかと巷で議論になるのは、企業に道徳的な行いを求めるような言論ですけれども、本来、企業価値を高めることを真剣に考えれば企業は値段に見合う程度にほどほどな安全を提供し、広報担当はいかなるときもスマートに記者会見をこなし、騒動は事業の一部にしか関係しないので事業の大勢は変わらない、状態になるでしょう。

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